議員研修講座に参加(東京)

今日は私としての問題意識が大きい分野の講座に参加しました。昨日の突然の新幹線のトラブルにより一時は参加できなくなるのではないかと思いましたが、何とかなりました。

1コマ目は、「ひきこもり本人の心情から見える能登半島地震の実態と日常の学校現場の課題」をテーマとして、池上正樹(特定非営利活動法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」副理事長)様を講師とした講座でした。以下、概要です。

  • ひきこもりの理解。病名ではなく状態像である。個別の状況があるが共通することは「人が怖い」「人を頼れない」、家の中だけが安心できる居場所である。
  • ひきこもり状態には法的根拠がない。自治体ではたらいまわしにされることもある。制度のはざまで取り残されている。
  • ひきこもる人は得てしてまじめで優しく感受性が強い、言葉でうまく表現ができない。
  • 家族が元気になることが本人の尊厳の回復につながる。家族は本人たちが生き延びるための選択肢を届ける役割を担う。
  • 家族が元気になることが本人の尊厳の回復につながる。家族は本人たちが生き延びるための選択肢を届ける役割を担う。
  • 専門の知識がある人は「こうするべき」という意識が強く、「経済的に自立することが先でしょ」とかすごく言われてきた。それよりも私の大事な気持ちを理解してくれる支援者に出会えていたら、もっと関係性が築けていたと思う。(ひきこもり当事者の女性の話)
  • 行政の支援はひきこもりが必要としている支援をしているのではない。支援団体のやり方にひきこもりの側が合わせるようになっている。
  • 縦の成長=問題解決で、横の成長=伴走的支援。横の成長が大事。
  • 専門性を振りかざすのではなく、関係性を大切に(共に学ぶ姿勢)する。当事者に返事やリアクションを期待しないこと。目的を達成しようとするとこれを期待してしまう。
  • これまでは、できないことを社会適応させようとしてきたのではないか。これからは人が持っているストレングスに光を当てていく。
  • ひきこもりの人にとって就労はゴールではない。多様な社会参加があり、それは多様な生き方と同じ。
  • 2022年3月に埼玉県ではひきこもり支援条例を制定した。
  • 良かれと思って行った先回りは、本人を傷つけ、生きる力を奪うことになる。本人の潜在力を信じること。
  • 国の施策があっても法律がなければ自治体は動きにくい。
  • (質疑1)アウトリーチをする心構えは → 本人へは会えないケースが多い。訪問する側としては目的を持たないこと。関係性をつくることが第一で、そのために訪問すべき。定期的に訪問すること。訪問しても長時間はいない。次に訪問する日時を告げておくとリアクションが見れ、次の支援につながる。「つながりたい、話を聞きたい、家族のために来ているんだ」ということを知らせると本人はほっとするかもしれない。必ず連絡先と訪問者の名前は本人に伝わるようにしておく。万が一のとき、助けを求められるようにしておく。
  • (質疑2)8050問題について → 喫緊の課題で、家族への支援が大切。家族と情報の共有をしておく。ひきこもり本人には手続きの必要なものがあることを伝えておく。できることは親が生きているうちにやっておくようにする。家族が第三者に相談できるようにする。8050問題についての学習会を開く。
  • (質疑3)不登校支援について → 本人の味方につくようにする。理不尽な思い、裏切られた思いに寄り添う大人がいることを分かってもらう。ひきこもりの早期対応といえる。

以下、所感です。

柏崎市には直営の引きこもり支援センターとしての「アマテラス」があります。この支援センターは直営がいいのかNPOなどの民間団体に任せるのがいいのかは判断が分かれるところですが、とにかくひきこもりの方に焦点を当てて支援を市全体で行っていこうとしていることは柏崎市として誇れるところだと思います。今回の研修は実際にひきこもり支援をしている方を講師として、ひきこもりの方々の思いやその解消に向けて支援してほしいことを聞かせてもらえました。当事者から気持ちをどのようにして聞き取っていくのか、支援者が強者の立場に立った態度や言葉遣いをするとどうなるのか、などについてもスキルを含めて知ることができました。概要にも記しましたが、「行政の支援はひきこもりが必要としている支援をしているのではない。支援団体のやり方にひきこもりの側が合わせるようになっている」という言葉には衝撃を受けました。まさに、予算獲得を第一に考えた事業の組み立てにすることなく、支援が必要な方の側に立った事業になっているのかを今一度検証することが必要だと感じました。柏崎市民にも今支援を欲している人がいます。そういう方々は個別の事情を抱え、一律には扱えないところがあります。必要なことは何なのかを寄り添いながら解消できるよう、私も微力ではありますが当事者とアマテラスをつなぐなどの支援に取り組みたいと考えていますし、市のアマテラスの今後の活動にも注視していきたいと思います。あわせて、ひきこもりの防止策の一つとして、不登校指導生徒への支援もその活動をしている市民団体の輪を広げるように協力したり、市や学校の取組が更に成果をあげられるように協力していきたいと思います。

2コマ目は、「進む教育改革~足立区の不登校対策と学力向上対策~」をテーマとして、定野司(文教大学客員教授、前足立区教育長)様を講師とした講座でした。以下、概要です。

  • 足立区の概要・・・人口は69万人、小学校67校(約3万人)、中学校35校(約1.3万人)。就学援助率は小学校22.6%、中学校30.9%、全国平均13.9%
  • 1 不登校対策
  • 足立区では、2024年4月に不登校特例校「東京みらい中学校」を開校。私立の中学校で、通信制高校と児童発達支援センターを併設する。全国で25番目の不登校特例校(学びの多様化学校)。
  • 不登校を生じさせない学校づくりとして、「安心安全な学校づくり」「魅力ある授業づくり」「子どもたちの絆づくり」を掲げ、欠席の早期段階での支援を構築した。
  • スクールカウンセラーの配置:不登校支援重点校(中学校5校)に週3回、それ以外の全小中学校に週2回。
  • 別室登校支援:全中学校で別室を設置。23校に登校サポーターを派遣。
  • 不登校の理解促進:不登校支援GUIDEの作成、全児童生徒に配付。不登校の子を持つ保護者懇談会の開催。
  • 子どもの状況に応じた多様な支援メニューで学びにアクセスできるようにしている。
  • 自力登校できない→お迎え支援(登校サポーターによる登校時のお迎え)
  • 教室に入れない→別室登校支援(登校サポーターが学校内の別室で支援)
  • 登校できない→チェレンジ学級(柏崎のふれあいルームのようなところ)
  •        →あすテップ(区内2か所の中学校内の通級型学習指導)
  •        →NPOの運営の居場所(民間団体と連携したところ、4か所)
  •        →家庭学習支援事業(不登校児の家に支援員が訪問)
  •        →オンライン教育支援センター(オンラインによる伴走支援)
  • チェレンジ学級とは、不登校を学校に戻すための適応指導教室。3か所。
  • あすテップとは、校内の一部を活用した不登校支援施設。独自のカリキュラムを編成し、教員が教科指導をする。2か所
  • 通級指導学級体制を廃止し、教員が巡回する巡回指導員にし、さらにその巡回指導員を全小中学校に配置した(巡回せず、自校の子どもに対応)。
  • 2 学力向上
  • 子どもの学びの力の育成として大きな柱を「わかる授業・魅力ある授業」と「個に応じた指導」とした。
  • わかる授業として、教員の指導力の向上に努め、「足立スタンダードの実践」に取り組んでいる。
  • 個に応じた指導として、そだち指導(小学3~4年生で取だし指導)や夏休みに4泊5日の学習合宿(制限ありの希望性、費用は区)を実施している。
  • 学力ポートフォリオ、SP分析法、MIMなど学力分析の徹底と活用。
  • AIドリルの導入で、上位生徒にも適切な指導を行っている。
  • 足立はばたき塾として、中学3年生で、成績上位で学意欲も高いが経済的理由で学習機会の少ない生徒を対象に勉強会を実施している。100人を選抜するが、それに受からない生徒への学習会も別に実施している。
  • 日本に教育の問題点は、「正解主義」「対話を学んでいない」ところ。
  • 最近は勉強から学習に、そして学びという言葉を使うようになってきた。学びとは人が能動的に学習すること。
  • 対話とは、自分理解(サスペクト)、他者理解(リスペクト)状況理解であり、否定しないで人の話を聞き、自分の立場を理解してもらうために話す。対話ができてこそ正しい議論ができる。
  • 困難にぶつかった時、「他人と比べ」「ミスしたくない、できないことを他人に知られたくないと感じ」て、苦手がどんどん増えていく。これが学力低下を生む。だから、子どものマインドセットを変える必要がある。すごい人だと思われたい(承認欲求)からすごい人になりたい(自己実現欲求)に変えていく。「運動会で1番を取る」ではなく「50mを10秒以内で走る筋力体力をつくる」にしていく。他人ではなく自分と比べる。
  • 目標を「○○しない」から「○○する」に変える。「夜更かししない」から「午後10時前に寝床に入る」に。

以下、所感です。

講師の足立さんはずっと区の職員として総務畑にいて、たまたま教育関係で問題が発生したため教育畑ではないところから教育長に抜擢されたとのことです。そういう方だからこそ、客観的に今の教育の課題が見え、取り組みにも数値で分析し、誰もが納得のいく事業展開がなされたと思います。不登校と学力向上のテーマはまさに柏崎市を含めた今の教育課題です。どちらも個別の問題に行きつくことでもあり正解というもないのかもしれません。しかし、共有することに対する環境の整備は行政として進めていかなければならないところだと考えます。また、個別のことだけに専門的知見が必要な分野でもあります。柏崎でも来春からフリースクールが開校されたり、不登校への対応が民間レベルで活発になってきました。行政としてはそれに任せきりにならない体制が求められます。上越市では足立区と同じように不登校特例校の設置の検討に入ったとの報道がありました。柏崎市としての不登校に対する環境整備もさらに強める必要が出てきたと思います。このように他の地域の取組状況の情報収集と市内で不登校児童生徒に関わる方々の思いや悩みに寄り添っていく取組を並行して行える賛同者を増やすように努めたいと思います。学力向上については、柏崎市でも学力向上プロジェクト事業に取り組んでおり、来年度その成果を確認することになっています。これは私も前から言っているように、学力は数値で測れるものばかりではないこと、そして評価は相対的評価や絶対的評価ではなく個人内評価で、その個人の頑張りの過程を認めていくことが大切なことも指導する側は一層意識してほしいと思っています。学力向上の取組にも正解があるものではないと思いますが、子どもの学びたいと思う意欲に応えられる環境だけは確実に整えなければならないと思います。それには教員の指導力向上は不可欠です。これらを含めた子どもの主体的対話的な学びをどのように伸ばしていけるのかを見守るとともに、微力ではありますが何らかの提言ができるように努めていきたいと思います。

以上、ひきこもり、不登校、学力向上、はどの地域でも今は大きな問題となってきています。柏崎におけるこれらの問題解決に一助になれるよう、一般質問をしたり、当局と情報共有したりする中で、市民の福祉増進に尽くしていきたいと思います。

投稿者: shigeno