ノーリフトケア

「ノーリフトケア」と聞いてどんなことなのかがわかる方はそれほど多くないと思います。正直、私もこの言葉を聞いて「?」となりました。ただ、言葉通りに考えると、「ノー」は~しない、「リフト」は持ち上げる、ということですから、特に介護現場で、患者さんを「持ち上げないでケアする」ということになります。持ち上げないで患者さんを移動させるということができるのか、と思ってしまいますが、持ち上げないで滑らせるようにして移動させたり、器具を使って移動させたりするのではないかと想像しました。

今日は日本ノーリフトケア協会のノーリフトケアコーディネーターの松田千恵子さんを講師に迎え、市議会議員6名が研修しました。

松田さんは新潟県ではただ一人のノーリフトケアコーディネーターです。全国には2000人ほどいるそうですが、ほとんどが関西を中心にした西日本に集中しているようです。その中でもこのように講演ができる方は全国で34人しかいないとのことです。そんなすごい方が柏崎市にいることは柏崎市にとっても誇りであり、宝だと思います。松田さんがいる地域がこのノーリフトケアに理解がないようでは話になりません。今日、研修を受けた6人だけではもったいなかったです。行政職員を含め、介護施設の方々などにもこれからは広げていく必要を感じました。

今日の研修会場は市役所の隣といってもいい「ケンズカフェ」でした。株式会社ケンブリッジさんの施設です。このケンブリッジさんは柏崎市の介護関係の器具のレンタルをはじめとした介護事業全般に関わっています。今回のノーリフトケアについても当然のことながら柏崎市では最先端を進んでいます。

それはそうと、今日の研修で印象に残っていることを以下に記します。

  • ノーリフティングポリシーは、「押さない、引かない、持ち上げない、ねじらない、運ばない」。
  • ノーリフトとは、持ち上げない看護、抱え上げない介護のこと。
  • ノーリフティング導入の結果として、患者が受ける利益は「皮膚の損傷が無くなる」「寝たきり(今は寝かせきりといいます)による合併症の予防」など、スタッフの利益は「腰痛などの痛みや身体負担の軽減」「ケア提供がはっきり提示させる」など、政府た経営者側の利点は「労災申請や治療費の削減」「人材不足の解消(採用した人が辞めなくなる)」「口のみによる求人や利用者の増加」「インシデントの発見が容易になる」など。
  • ノーリフトケア協会の本部は神戸に、支部は関西を中心に10か所あるが、神奈川支部以北には支部がない。コーディネーターがいて、導入している施設が3か所以上ないと支部ができない。
  • 新潟県でも村上、佐渡、小千谷、栃尾などが一生懸命に取り組んでいる。柏崎市でも「ゆたか訪問介護ステーション」や「さつき荘」が取り組んでいる。
  • 海外では特にオーストラリアが先進的に行っている。海外から日本で介護の仕事をやりたいという人が、日本の介護現場にノーリフトの考え方や器具が導入されていないことを知ると、母国に帰るというくらい、海外ではノーリフトケアが当たり前になっている。
  • 介護等の現場での腰痛は職業病なのに、対策は個人に任されている現状である。その腰痛の原因は2つあり、「重さ(人が持っていい重さは5~7㎏)」と「不良姿勢(中腰の姿勢は5~7秒間まで)」といわれている。
  • オーストラリアなどは「持たない文化」である。椅子は引きずって移動させるもの。
  • 介護におけるノーリフトは一つのツールであり、すべてを解決できるものではない。
  • ノーリフトでは器具が必要だが、器具がなくても患者を滑らせて移動させるシートがあるだけでも少しはスタッフの負担が減る。
  • ノーリフトの器具は個人宅に設置してある家もあり、ケンブリッジさんのレンタルだと月2万円くらいからできるものもある。
  • 市民の多くがノーリフトケアについて知ることで、何かの機会に施設側にノーリフトケアでお願いします、と言うだけで、施設やそこで働くスタッフ、経営者の意識が変わり、介護現場が変わっていく。
  • 今の介護現場は患者さんファーストではない施設、スタッフが少なくない。

ベッドから車いすに移動する際のノーリフトケアの実践を見ても、普段見慣れている車いすではそれができないことが分かりました。まだまだ昔ながらの介護の知識や設備しかないところにとってはすぐに変わることは難しいかもしれませんが、患者の増加のみならず介護スタッフの離職を防ぐためにもこのノーリフトケアの考え方を早急に取り入れていくべきだと思いました。

講師をしてくださった松田さん、お忙しい中だったと思いますが、大変ありがとうございました。

投稿者: shigeno