市教育センター研修~児童虐待の対応を学ぶ~

議員になってからも毎年、「柏崎市教育センター研修」の講座をいくつか受講させてもらっています。教育センター研修ですので、学校の先生方を対象とした内容です。しかし、先生方だけではなく、一般の市民も学んでほしい講座も少なくありません。例えば今日の「児童虐待の対応を学ぶ」にしても、自殺防止にしても教員だけの研修テーマではありませんから。

今日の児童虐待への対応の研修に先立ち、子ども支援課長のあいさつの中に、柏崎市の児童虐待の件数の話が出ました。昨年度は64件、今年度は12月までの段階ですでに89件発生しているとのことでした。これは非常事態です。新型コロナウイルス禍ということで自宅にいる時間が多くなったことも要因の一つかもしれません。検証が待たれますし、対応をしっかり行わなければならないと思います。

さて、今日の講座は長岡製十字病院小児科の田中篤ドクターを講師として行われました。受講して印象に残っていることを以下に記します。

  • 誰でも、被虐待的な過酷な環境で育つと、理性の力で自分自身をコントロールできなくなってしまう可能性がある。
  • まず必要なことは、意見や説得、説教、処罰ではなく、疾患という視点からの理解、ケア、治療である。
  • ヒットラーやスターリンは親からの虐待を経験したため、成人した後にあのような行動につながったとも考えられる。
  • 子どもの虐待で大切なことは、「本当に大切なことは対応よりも理解」「どんなことがあっても、子どもと、そして虐待者である親とつながり続けようとすること」「つながり続けるために重要なことは、直ちに虐待者を変えようとせず、好奇心をもって理解しようとし続けること」「子どもや親の理解に必要なことは、虐待による心身への影響と後遺症についての深い理解と経験」。
  • 子どもの虐待には、「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「ネグレクト」がある。
  • 2004年に児童虐待防止法の改正により心理的虐待をしっかり定義したところ、それまでは身体的虐待が多かったが、現在(2019年)の割合は、「身体的虐待が25.4%」「性的虐待が1.1%」「心理的虐待が56.3%」「ネグレクトが17.2%」である。しかし、欧米では性的虐待が7~8%に対して日本が少なすぎていることが心配なところでもある。
  • 心理的虐待は、「拒否(子どもの価値を認めないなど)」「孤立化(子どもが適切な友人関係を結べないようにする)」「恐怖を与える」「無視」「Corruptin(コラプティング:子どもを反社会的な行為に導く)」がある。
  • 子どもの不適切な行為や行動の根っこには親からの虐待があるのかもしれない。そこを解決できなければ繰り返してしまう。
  • 児童虐待の後遺症として子どもに残ってしまうことには、「中枢神経系の機能的・器質的変化」「自傷行為、自殺傾向」「精神科への入院」「反社会性人格障害、境界型人格障害、多重人格障害」「身体表現性障害、不安障害、うつ病、摂食障害、統合失調症」「アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症」「DV加害者。DV被害者」「反抗挑戦性障害、素行障害、非行、社会的事件」「虐待の世代間連鎖」がある。
  • 子ども虐待で大切なことは、「子ども虐待は重大な疾患である」「疾患としての子ども虐待の理解を深める」「虐待してしまう親も本当は苦しんでいる」「自分の経験からの考えや意見を押し付けない」ことである。
  • 子ども虐待は人間関係の病である。親自身の子どもの頃の自分の親との関係が深く関係している。人間関係は「愛着形成が基本」。親子ともに愛着形成の問題を抱えている。
  • 子どもの行動や対人関係やコミュニケーションの問題は、周囲の環境や大人たちとの双方向性の問題であり、子どもだけの問題ではない。
  • 親に対して意識してやるべきことは、「ストップよりもスタート」として、悪いとわかっていてもやめられないことをやめさせようととするよりも、何かいいことや楽しいことを始めてみることの選択肢の提案をする。

講師の田中先生は、上記の話の中に、ご自身で関わった子どもの症状など具体的な事例としてお話しくださいました。「子ども虐待というキーワードでやりたいことは子育て支援」だということです。虐待という行為の表面をなぞって、それを辞めさせるだけではなく、その行為が表出した要因を解明し、親に自覚してもらうことによって、支援者と一緒に解決していかなければならない、大変深い内容だと分かりました。教員としてはその親子の一時期だけの関わりになってしまうかもしれませんが、少なくても被虐待者である子どもが「虐待の連鎖」を自分の子どもに起こさないためにも可能な限りのことをしていかなければなりません。柏崎市での児童虐待件数が今年度は非常に増えています。私としても何か関われることがあるかもしれませんので、時には「虐待があるかもしれない」という視点で親子関係を見ていきたいと思います。

講師の田中ドクター、ありがとうございました。

投稿者: shigeno