市教育センター研修「児童虐待防止講演会」

今日は標記の「児童虐待防止」をテーマに、長岡赤十字病院の田中篤小児科ドクターを講師にした講演会に参加しました。子どもたちを接している学校現場では必要不可欠な視点ですから、大勢の参加者がありました。市役所4階の会場に40人、リモート参加で37人が田中先生の話を聞きました。

県内での児童虐待の相談件数は令和2年84件、令和3年72件でした。通告件数は令和2年が17件、令和3年が25件でした。相談であれ通告であれその件数が増えることは大変な状況が増えているというとらえではなく、早めに連絡できるようになってきているという見方もあり、望ましい傾向であるといえるそうです。いじめも同様で、いじめの報告件数が増えていることは早期発見や対応ができていたり、多くの目で子どもたちを見ているということなので、望ましいとも言えることと同様ということです。印象に残っていることを以下に記します。

  • 何事も「チャイルドファースト」、子どもをまずは守る姿勢で。
  • 夏休みを前にした子どもの気持ち調査では、気が重い7%、やや気が重い27%であり、家庭で長時間過ごすことにネガティブなイメージをもっている子どもが3人に1人はいることになる。
  • 子どもの行動や対人関係やコミュニケーションの問題は周囲の環境や大人たちとの双方向性の問題であり、子どもだけの問題ではない。
  • 子どもや親と向き合う支援者の意識のもち方としては、「子ども虐待は重大な疾患である」「虐待してしまう親も本当は苦しんでいる」「自分の経験からの考えや意見を押し付けない」ことが大切である。
  • 子ども虐待で大切なことは、「本当に大切なことは対応よりも理解」「どんなことがあっても親とつながり続けようとすること」「直ちに虐待を変えようとせず、好奇心をもって理解しようとし続けること」「子どもや親の理解に必要なことは、虐待による心身への影響と後遺症についての深い理解と経験」である。
  • 重症度の高い虐待は、「親子分離もやむを得ない」「子どもの心身の安全の確保は子どものためであることは当然であるが、虐待者の心、魂をも救うための行為、虐待者のための行為でもある」。
  • 早期発見にために大切なことは、「疑いをもつことは、子どもと親を支援するための勇気ある行為」である。
  • 虐待する親とつながり続けるためには、「どんな親に対しても先入観念をもたない」「目の前の親はその親なりに一生懸命に生きている。本当は苦しんでいる」という意識をもつこと。
  • 問題を抱えている親への接近の仕方は、「傾聴・共感・受容を通して、何とか信頼関係を構築し、家族全体をネットワークで抱え込んで、自己問題解決能力を高めるように支援する」こと。
  • 子ども虐待は人間関係の病である。
  • 子ども虐待は支配するか、支配されるかの権力構造を背景にした人間関係の病。人間関係は愛着形成が基本。親子ともに愛着形成の問題を抱えている。
  • 機能不全家庭が増えている。家庭の機能には様々なことが含まれるが、乳幼児期の子どもの健やかな心身の発育にとって最も大切なものは、愛着が形成されていくこと、そのための安心感と安全貫、ありのままの自分を受け入れられているという感覚の提供である。こんな家庭が機能不全家庭、「よく怒りが爆発する家庭」「他人や兄弟姉妹といつも比べられる家庭」「あれこれ批判される家庭」「期待が大きすぎ、何をやっても期待にそえない家庭」「他人の目を気にする表面だけいい家庭」「親が病気がち、留守がちな家庭」「親と子の関係が逆になっている家庭」など。
  • 愛着形成とは、子どもの誕生直後から形成される主たる養育者(母親)に対する本能的な結びつき。母親との間にしっかりとしたアタッチメントを形成した乳児ほど、母親を安全基地として探索行動や人間関係を広げる行動に熱中することができる。全ての人間関係、生き方の基礎であり、精神的安定性、肯定的な生き方・自己肯定感・肯定的な人間観に関与している。
  • アダルトチルドレンとは、機能不全家庭のもとで育ち、何らかの心的外傷体験(トラウマ)を負って大人になった人。愛着の形成が障害されて育った人。「ありのままの自分を出して生きられない人」「他人の誘いや要請にNOといえない人」など。
  • 問題のある親にありがちな人間関係のゆがみは、「強いものへの従順さと弱いものへの抑圧・攻撃性を特徴とした、力に支配された退任関係」「権力に対する攻撃的姿勢。教師や行政担当者がターゲットになりやすい」「人間関係を苦痛なもの、不快なものとしてひたすら避ける」などである。
  • 子ども虐待というキーワードでやりたいこととは、子育て支援である。
  • 今の自分の立場でやれることがある。それぞれの立場で、自分のできることをボチボチやりましょう。

毎回この子どもの虐待防止についての研修会には参加させていただいているのですが、毎回違ったところに気づきがあります。虐待する側、親への支援となると私のように経験や知識もない者にとっては難しいことかもしれませんが、でも、やれることはあるはずです。時間はかかることかもしれませんが、このようなケースに出会った場合は、一緒に解決に向けて取り組みたいと思います。

田中先生、ありがとうございました。

投稿者: shigeno